認知症の親の財産管理について

今回は非常に専門的な話になりますが、
利用者のご家族向けの内容になります。
認知症の親の財産管理についてを説明したいと思います。

銀行の窓口ではこんなシーンがよくあるようです。

娘「認知症になった母を介護施設に入れたいので、母の預金口座からお金を下ろしたいのですが」

銀行員「たとえお母さまの通帳と印鑑があっても、ご本人の意向を確認させていただかないと預金からお金を下ろすことはできません。ご本人に窓口に来てもらうか、あるいはお母さまの自筆の“委任状”と、娘さんの“代理人届”が必要です」

娘「そうはいっても母は認知症が進んで、委任状を書くどころではないのですが……」

ここでいくら娘が母親の病状を説明しても、
いくら「娘の私がお金の管理を任されている」といっても、
銀行は万が一の不正に備えて母親の預金口座からお金を下ろしてはくれないでしょう。

たとえ親子であれ、その人のお金を勝手に使ったり、管理したりすることは法律で禁じられているからです。
もし親のお金を勝手に使ったら、兄弟姉妹間での紛争にもなりかねません。
いったいどうしたらいいのでしょうか。

 

認知症の方の財産管理の4つの方法

 

認知症の方の財産管理の方法として、4つの方法があります。

①成年後見制度を利用する
②任意後見制度を利用する
③財産管理契約をする
④家族信託を利用する

それぞれ、メリット、デメリットがありますので、簡単にまとめます。

こうしたとき、娘が成年後見制度を使って認知症の母親の後見人になると、
母親の財産を管理できるようになります。

成年後見制度とは、病気や認知症などで判断能力が不十分な人に代わって「財産管理」や「身上看護」ができる制度です。

認知症の母親の財産管理をするためには、
家庭裁判所に「娘の私が母親の後見人になりたい」と、申し立てをします。
申し立てができるのは本人、配偶者、4親等内の親族です。

本人が申し立てをするのが不安な場合は、
司法書士や弁護士、社会福祉士などの専門家も申し立てができます。

家庭裁判所はこの人が後見人としてふさわしいかどうか一切の事情を考慮して可否を決めます。

法定後見には「成年後見人」「保佐人」「補助人」のランクがあり、
認知症で判断がまったくできない母親なら、娘は母親の「成年後見人」、母親は娘の「被後見人」となり、
娘の権限で母親の預金の出し入れをしたり、母親名義の不動産を売ってお金に代え、
そのお金で介護施設に入れることもできるようになります。

成年後見人になった娘は、今後、母親のお金を使うにあたり、
どのような目的でいくら引き出したかなど、
あとあと説明ができる記録を残しながら財産管理をすることになります。

 

 起こり得る問題とは

 

ここで問題となるのは、
成年後見人となった家族が、権限を逆手にとって自分の生活のために親の財産を使い込んでしまうことです。

「後見人として任せられたから」とはいえ、親から子どもにお金が移ることは贈与であり、
他の兄弟姉妹もだまってはいないでしょう。

また、「お姉ちゃんが認知症のお母さんのお金をどんどん使っちゃう……」と離れて暮らす他の兄弟姉妹が心配するような場合には、
成年後見制度を使って、第三者の専門家に後見人になってもらうよう依頼したほうがよいかもしれません。

家庭裁判所は、本人の家族を成年後見人として認める場合もあれば、
それを認めず弁護士、司法書士、社会福祉士、税理士など第三者の専門家へ誘導する場合もあります。

さらに家族が後見人になる場合は、その監督者として専門家を監督人にすることもあります。
つまり申し立てのあった人それぞれに適切な対応をしているのです。

専門家が後見人になった場合は、本人の財産から報酬をもらうことになります。
その報酬額は周囲の環境や資産状況を見て家庭裁判所が決定しますが、
多くの場合は月1~3万円です

また、先述しましたが、本人に意思決定能力があるうちに、
財産管理について財産処分権を子供に託すという「契約」をあらかじめしておくという方法や、
弁護士、司法書士に財産管理を委任する、財産管理契約をあらかじめ行っておくという方法もあります。

いずれにしても、認知症が発症してから預金を動かす場合は、
後見の手続きをしなければ何もできません。
認知症は、高齢になればなるほど発症の割合が増え、
85歳以上では4人に1人が認知症とも言われています。

本人が元気なうちに、こうなった場合は誰に管理してもらいたいなど、
意思表示をしておくことで、家族間のトラブルを防ぐことができるかもしれないですね。

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